近年,デジタライゼーションの急速な進展が市場に変化をもたらす中で,大企業が社外のスタートアップ企業への支援やコラボレーションを通じてオープンイノベーションを促進するコーポレートベンチャリングが注目を集めている。コーポレートベンチャーキャピタル業界のデータプロバイダーであるGlobal Corporate Venturingを主宰し,デジタルマガジンの発行などを手掛けるJames Mawson氏によれば,企業によるスタートアップへの投資額はこの10年間で急増し,2020年だけで3,000社超のスタートアップに対して,約1,290億ドルが投じられたという。また,近年の傾向として,より多くの企業が単なる出資を越えてコラボレーションを通じた戦略的な機会を求めるようになっている。
2019年に日立製作所の戦略的CVC部門として設立したHitachi Ventures GmbHはミュンヘンとボストンに拠点を置き,コーポレートベンチャーキャピタルファンド「Hitachi Ventures Fund」を通じて日立の戦略との適合性を見ながら,欧州,イスラエル,米国を中心としたスタートアップ企業に投資している。その目的は,幅広い分野の優れたスタートアップとのコラボレーションによってその革新的な技術やビジネスモデルと日立の技術,顧客基盤を融合することで,顧客や社会の課題解決に向けたイノベーションの創出を支援することにある。Hitachi Ventures GmbHは,2020年度だけで1,200社以上のスタートアップを調査し,既に7社に出資した。